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エコムジャーナル #65

2026/02/01

【兼好忌】

 

 金田一春彦は「言葉の歳時記」に、「2月15日は西行忌。同時に兼好忌でもある」、さらに「兼好は『徒然草』の中で、40歳に達しないうちに死ぬのがいいと書きながら、69歳まで生きながらえた」と書いている。手元の角川ソフィア文庫で何段にあるのかを探していたら、第35段の「悪筆は個性の表現」が目にとまった。

 

 35段は『手の悪き人の、はばからず文書き散らすはよし、見苦しとて人に書かするはうるさし』だ。要約には「字の下手な人が、読み手に遠慮しないで、どしどし手紙を書くのは、大いに結構だ。逆に、書く字がみっともないからと、他人に代筆させるのは、自意識過剰で、嫌気がさす」とあった。全く同感、我が意を得たりである。

 もっとも、自分の字の上手・下手を気にしない人はいないであろう。兼好とてそれは知っている。そのうえで、そんなこだわりは捨てよう、と忠告し、あしきこだわりは捨てるに限るというというところであろう。

 いつだったか、秋田県知事とNTTと他2民間で認知症者の行方不明者対策として、GPSを組み込んだ靴を販売展開する協定を結んだことがあった。協定会場はいわゆる県の公式記者会見室でテレビ取材も入って、いざ署名となって大変緊張したことがあった。家内は私が署名する放映があったことを話してくれた。その時は目の前をライトで照らされ署名したのだが、手は震えていなかったと思うが自分の署名をするのにこのときほど緊張したことはなかった。字の下手うまさは別にして、署名は他の3者と同じ大きさに気を付けたことだけは今も覚えている。

 

 私の硬筆の下手さは「人後に落ちない」というのか、いわゆる悪筆というより下手の類だ。字の大きさや略し方が一定しないのだ。小学2年の時から書道を始めて、高校3年まで大好きな王義之や顔真卿の臨書を重ねたものだが硬筆の下手さは今もって変わらない。今は下手さを隠すためにパソコンにむかっている。兼好さんは“パソコン?それはなんだ?” と言っているだろう。 

近藤 嘉之